ほかの本でもそうですが、広瀬先生の描く土方は、どことなくほかとちょっと違う感じがします。思いっきり違うのではなく、どことなく。なんかいいお兄ちゃんという感じで、キラキラしている。あ、乙女と言ってしまってよいかしら(笑)
『土方歳三 散華』 広瀬仁紀 小学館文庫
池田屋直後から土方の死まで。をさらっと描いた作品。いや、さらっとっていうか、油小路から即座に鳥羽伏見に入って、近藤狙撃後十行程で処刑、となってるんで、省くとこかなり省いちゃってます。そのかわり、描くとこはじっくり。というわけで、割と珍しい構成かもしれません。
さてさて土方先生、最初にもちらっと書きましたが、キラキラ、生き生きしてます。というか、広瀬先生の本尾登場人物は、青春真っ只中な感じでキラキラした輩が多いと思う(笑)
土方も話し方が明るいし、軽口たたきまくってる!
特に沖田と話してるときとか、特に。沖田と土方の会話って、沖田にからかわれる土方の図、ってなってる小説が多いような気がしてるんですが、この土方はかなりからかう側にまわってます。口調もほんとぽんぽんとしてて…。
そんでまた感動して泣き出したり、偉い人に声かけられてうろたえたり、と感情豊かなんですよね~。常にクールでかっこいい土方、っていうより、多摩のバラガキを大いにひきずったほんとは心優しいんだよって感じの土方です。
あと、近土色が強い(笑)
近藤と土方、ほんっとに仲がいい。土方は近藤さんを手放しで大好きだし、近藤もおおらかで、「はいはい」って感じで土方を見守ってるようなとこがあって素敵です。8.18事件で飛び出したくって「あっち攻めたい!攻めたい!いいよな?近藤さん」って半ば脅し状態でわめいてる土方に、苦笑いで同意してあげるとことか、それを見て「しまった言い過ぎた」って反省してる土方とか、ほんとお前らなんだよ、年中よい夫婦の日かよ!みたいな(笑)
もう、なんていうかキャッキャッした負けん気の強い若い嫁さんに、振り回されて喜んでる?落ち着いたダンナといった感じでしょうか。
てか、めちゃくちゃ通じ合ってるんですよ、この2人。それなのに(?)土方の呼び方が、「トシ」ではなく「歳さん」なのが私的に残念だったり。
あと、珍しいことに、青蓮院宮がかなり出張ってます。
私が読んだ幕末本では、大概名前だけさらっと出てきて終わるんですが、ここの青蓮院宮は豪放磊落などっちかっていうと武人みたいな公家さんで、新選組大好きらしい。青蓮院宮の屋敷を警護するエピソードもあります。
あ、もう1点珍しいと思ったのは、明保野亭事件(この本では曙亭)が丁寧に描かれてること。これを読んで、わたしは芝君のファンになりました(笑)
切腹させろよ、的な空気になってきたところで、土方が必死で芝君を庇おうとしていて熱い!組のためなら見殺ししまーす、って感じの土方でもそれはそれで違和感ないと思うんですが、だからこそ新鮮といいますか。んで、そんな必死に自分を庇おうとする土方の姿を見た芝君が感動して、迷惑かけられないってことで切腹するんですが、ああ、会津武士泣けますねえ~。
それから必ず出てくるオリキャラ女性。
今回は尼さんでした。でも別にそんなあからさまな恋仲とかにはならないです。沖田が気にしてこっそり会いにいってました。そんで2人して仲良しになってた。何やってんだろ、あの沖田土方は。
そんな生き生きキャラで通して函館まで(この本では箱館ではなく函館でした)きた土方ですが、榎本も大鳥もいいキャラでした。大鳥とは喧嘩してばっかですが、それがよいです。というか、鳥歳の基本のような喧嘩なのでかわいい(笑)
土方が最後の出陣を申し出るところの、榎本と大鳥との3人の場面(いや、周囲に人いるんですけどね)が好きです。もう好きにさせてあげようと、穏やかに土方の出陣を認める榎本と、なんとかして止めさせたい(みすみす死なせたくないから)大鳥。
…ってもう土方が愛されてるって感じしませんか!!ときめく。
しかししかし、土方の死に方は私があまり好きではないタイプの奴でした(笑)
えーとあれです、続いてくる隊列を止めて、ただ一騎で敵陣に駆けて行く奴。
あのいかにも自殺行為なところが苦手なんですよねー、なんてか、死ぬために戦うってのがちょっと…。死を覚悟して戦うのは好きなんですが。
というわけで最後は個人的にはあんまりなんですが、もっとページ数があってじっくりそこまでの土方の心境を描いてもらっていれば大丈夫だったかもしれません。あの薄さが惜しい作品でした。
斉土のバイブルと巷で有名なこれ。函館まで買いにいったんですよ、ネット通販できると知っていたにも関わらず(笑)しかし初版のほうがよいんだそうですねえ。というわけで、これは改訂版でございます。
『散華 土方歳三』 萩尾農 五稜郭タワー
一応、土方の多摩時代から最期までを描いた作品。でもやっぱり鳥羽・伏見以降に重点を置いているような感じです。
この本のすごいのは、みんなが土方を大好きなこと!と土方が乙女なこと!そして後半の怒涛の斎土(笑)
ちょっとこっちが恥ずかしくなるくらいです。
芹沢も山南もみんな土方が大好きらしい。死んでも出てきます。ていうか、ここでは土方は死者と会話できるらしい。しかも土方の都合のいい事ばっかり言う(笑)乙女だからね、妄想しちゃうんだよね、土方先生!
総司も、勿論他の小説と同様、土方のこと大好きですが、ここの彼は、土方だけが大事で心配で仕方ない…って感じ。自分の死を感じたら、さっそく斉藤に土方のことを託してます。「土方さんを守ってください」と。土方が本当は鬼でないことを知っているのは、斉藤だけなので斉藤にしか頼めないんだって。今思えば、これが今後の斉土ロードへの入り口だった…(笑)
総司の土方への想いは、最期のほうはほんとにただただ切ないです。総司関連でいちばん印象的だったことば。
「俺、好きだったよ、歳さんのこと」
半分、冗談のように告白してみた。
「告白した」ではなく「告白してみた」っていうのが素敵じゃないですか!
そんなこと改めて言う必要のないことで、ふたりともとっくに感じていたことだけど、もしかしたら最期になるかもしれないから、あえて今(会津に向かうと土方がいいにきたとき)言葉にするっていう感じがして、好きです。土方も土方で、赤くなって照れてるんだけど、茶化したりしないのが、本気臭い(笑)
あと、総司関連では、京都時代にぶらっと1人で外出した土方に、後で斉藤と総司と2人してたっぷり説教するっていうエピソードがとても好き。2人に叱られる土方、かわいいじゃないですか!
そして、市川あたりからは、もう斉藤が土方のこと独占ですよ。なんかいつもいる気がする。いや、かかれてないんだけれど気配を感じる…(笑)妄想ですか?そうですか、すみませ…。
そしてそしてこのあたりから、土方の労咳の症状が出てきます。そうなんです、土方労咳説採用なんですよ、この本。
宇都宮城攻略のときも、ひとり有馬を探して動きまくる土方を必死に追う斉藤。しっかり守ろうとしてます。SP斉藤。土方の無鉄砲さに苦笑してるんだって…!斉藤が「困ったなあ、可愛いなあ」とか思っているのがよくわかる(笑)「仕様のない人だ」ってそればっか言ってます。
で、勝手に動く土方がついに敵に囲まれ、ぬかるみに足をとられてピンチになったとき、とっさに「斉藤」と叫ぶ。斉藤、乱戦と土砂降りの雨音の中、聞こえるはずのないその声を聞くんですよ…!そんなエスパー斉藤。
土方を囲んだという敵兵の歓声で、場所を特定し、島田や相馬(なぜかいる)もかけてくる。でもやっぱり助けるのは斉藤なんですよね。オイシイ…。そして、戦後、怪我した土方を斉藤がまた無茶して…!って睨みつけるんですが、もうそこの2人のやりとり。
「怒るなよ。余計に痛むじゃねえか」
「怒ってやしない。怒ってはいないが」
「怒っているじゃねえか!」
痴話喧嘩か…おまえたち…!!(笑)じゃれてるようにしか見えません。横にいた島田はたいそう迷惑だったと思います。とにかく会津滞在時のふたりは仲がいいです。2人の会話シーンがほんと多い!斉藤がいないときもしっかり斉土ネタが出てくるという大プッシュぶり。
斉藤がいないと土方すねてますからねー。斉藤を隊長にして白河行かせたときなんて、ときどき戦況報告にくるって言ったのに、それがなかなか来ないってプンプン。そんで、「お前は嘘つきか」と伝えさせる。そうすれば、斉藤がむきになって飛んで帰ってくると確信して…。って悪女か!土方!
なんかふたりのラブラブっぷりにあてられる…(笑)
斉藤と別れるときも、ちゃっかり再会約束してます。中島に斉藤は死んだと聞かされても、土方はまったく信じない。斉藤の魂が来なかったからだそうな。さすが死者と会話できる男、土方。「死んだなら俺のところに来るはず」とか言ってますよ。もう土方のこの自分は斉藤に愛されてるという確信、随所に出てきます。すごい自信、箱館いっても続いてます(笑)
箱館でも土方かわいいです。箱館でもエピソードはいろいろオイシイ。
寝坊して、軍議さぼったりしてます。一度はショックを受けてなんで起こさなかったと怒るんですが、伊庭も出てなかったときいて、ならいいとかおとなしくなる。なんで!なんで伊庭ならいいの!?伊庭とも仲いいんで、絶対なんかありますよ、こいつら…。つーか、まさか昨夜伊庭といっしょだった…?だから伊庭ならいいのか!?そうなのか、土方!!
労咳の話を、土方は斉藤にしか打ち明けてないんですが、伊庭はなぜかいつの間にか気づいているんですよ、そんなところも怪しい、あいつら(笑)
宮古湾海戦の野村も素敵。土方が野村を引っ張りあげようとしてるんだけど、土方が泣いてるのを見て、野村は自ら船を蹴って海に落ちていくんです。それで満足した!って感じで。かっこいい…!
そして、ついにあの男が…。
斉藤、来ちゃった…、箱館まで!(笑)
もう萩尾先生の斎土っぷりがほんとーによくわかる。そして、土方に
「あなたを迎えにきた」
とか言ってます。うおー、それはプロポーズか!ふたりで本土に戻って結婚しようってか!!!!
もう本気でそう言っているように聞こえるからすごい!!
勿論、土方は断るんですが(プロポーズをじゃないですよ、本土に戻ることをです)。で、斉藤はじゃあ自分もここで死のうと覚悟を決める。でも土方のほうは、何があっても斉藤だけは助ける、と覚悟を決める。愛しあいすぎだよ、お前たち!(笑)そして、最期の戦いが近付いたころ、土方は斉藤に写真と遺品を日野に届けるように言う。
…ん?斉藤は市村の代わり…???
だったらしいです。それほどまでに土方の愛が深いっちゅうことですよね。これ。
で、その場は言うこと聞いて去るんですが、11日の戦いの日に姿を現す斉藤。やっぱり…(笑)土方の最期も斉藤が看取ります。最期まで斎土です。
しかし個人的に注目したいもう1シーン。
土方が最後の出撃をした直後、松平が後を追う描写があるんですが。その松平さんの必死さに愛を感じるんです…!
土方の死の決意を松平が(なぜか)急に悟って慌てて追っていくんですよ。
―死なせてはならない。あの男を死なせてはならない―
とか
死ぬな!土方!
とか心の中で叫びながら!!
うおー、タロ歳万歳!!とはいえ、あれですよ、タロさんほかには特に出てこないんですけどね。タロさーん!!タロさんが、黒くエロチックに活躍する本が読みたい(そんなものはきっとない)です。
まあなんだかんだ言って、総じて斎土。斎土派さんにはお薦めです。あと一部分のみ伊庭土。でも五稜郭メンバはそんなに出てこないのが残念でした。
ついにこれを書くときが。なんか、萌えどころが多すぎてどう整理してよいかわからないので、今から怖い。怖いけれども、がんばります。ある意味、燃え剣以上の土方ファンバイブルではないかと。てか、私にとってはこっちのほうが確実にバイブルです。だって、いちばん好きな時代だけたっぷり書いてあるんだもの!というわけで。
『歳三 往きてまた』 秋山香乃 文芸社
お話は、慶応三年12月から明治2年5月まで。つまりは、鳥羽伏見から箱館戦争までって感じでしょうか。ああ、もうたまらない、この時代この時代!わたしにとってのいちばん大事な季節だけを切り取ってくれた感じです。
萌え所は、とりあえず箇条書きにさせてください。だって私の力では、文章でまとめるなんて無理ですもん!多すぎますもん!
・斉藤の土方に対する話し方がなんていうか、攻めの色気に溢れている。返事が「あいよ」って…!
・鳥羽伏見で源さんの甥っ子少年を懐に入れて眠る土方。
・それを見て嫉妬する竜田萩乃進(19歳)
・近藤を助けて欲しいと土下座する土方の顎を持ち上げて見つめる勝海舟。その勝に耳元で何か吹き込まれた途端、震え出す土方。ていうか、初めて閨を共にする男のそばに控えるような土方。
・初対面で内藤隼人と名乗った土方に、しつこく土方さんと声をかける大鳥。いちいち訂正する土方。
・やたらと明るく土方をからかっている(風な)秋月登之助。
・大鳥と土方を夫婦扱い(しかも土方は嫁と断定)する秋月。
・土方を守るように、と土方と共に行動する隊士たちに飴玉を配る斉藤(会津先発隊)と、飴玉1つを理由に命がけで守ろうとする忠助。忠助は最期までほんとにかわいい。
・足を撃たれた土方を抱っこする島田。
・斉藤の「斉藤一はあんたのものさね、山口一は殿のもの」発言(内心でですが)。
・会津戦線で土方が恋しい大鳥。土方に頼まれて来たと山川に、「土方…土方といえば、の土方か。土方歳三?」と動揺しまくる大鳥。喜びすぎだ!
・山川を副総督にした大鳥を見て、「若い女房に乗り換えた」だの「古女房、亭主に愛人を遣わすの図」だの脳内夫婦設定を推し進める秋月。
・今市で敗退して戻ったら土方がいないと騒ぐ大鳥
・やたら玉置になつかれ、抱きしめられる土方。というか玉置と土方とのエピソードは色々あるんですが、ほんとにどれも泣ける…!
・仙台で再会した土方を逃すまいと迫る隊士たち。(ほんとに「迫られ」って書いてあったんだもの(笑))
・襦袢と着流し姿で片膝を立てた土方の色気にあてられ、もぞもぞしだす隊士たち。その後こられきれずに娼館へ繰り出す。まさかみんなで襲うわけにもいかないもんね!
・田村・市村・玉置の小姓3人組のお母さんな土方。かわいい。
・蝦夷共和国設立の祝賀会の夜、ワイン片手に土方を訪ねる大鳥。土方を酔わせて喜ぶ大鳥。(ちょっと妄想入ってます)
・土方小説なのになぜか大プッシュな野村×相馬。そして長い相馬の筆おろしシーン。死に際の野村のかっこよさ…というか相馬への愛。
・伊庭の「淋しがり屋」の土方のために「俺はちゃんと(土方の)後に逝ってやるよ」発言と、「あんたの泣き顔見せてくれよ」発言。伊庭と土方の別れは泣けます…!お互い深くを知り合ってる者同士の愛情深い感じがたまらん。
ざっとこれだけにしておきましたが、普通の文章の中に萌が散りばめられている感じなので、単純にどきっとした箇所をあげていくと止まらないと思います。ほんっとにお薦め!
土方がみんなに愛されていて、土方受けとしては、これ以上のバイブルはいまだ見たことがありませぬ。でも男のひとに薦められるかはちょっと自信ないけれど(笑)
土方を主人公にした場合、大鳥、榎本など箱館政府幹部、または薩長のだれか、近藤さんまで!と悪く書かれる可能性のある人(というか実際に悪く書かれたことのある人)ってたくさんいると思うんですが、この本では誰のことも悪人としては書いていないところも、本当にすごいな~と思います。作者さんの幕末と言う時代への愛情を感じる。とか真面目なことを言ってみたりして。まあ、両者の本を書かれた方なのでそうだとは思いますが。あれ、でも司馬御大も両方書いてるけど、確か大鳥とかちょっとだけひどかった…、ような…。
というわけで、もし未読の方がいらっしゃったら全力でお薦めいたしますよ…!
これを今更書く必要があるとは、到底思えませんが、一応既読本は全部書いていくというポリシーで進めているので(笑) 自己満足のためだけに書きます…!
『燃えよ剣』 司馬遼太郎 新潮文庫
私は基本的に鳥羽伏見以降、というか流山以降の土方が好きなのですが…、これ、多摩時代が長いんだ!(笑)でもかわいい。土方はかわいい。
沖田と土方、斉藤と土方の関係が好きです。
沖田にはかなわんって感じが大好き。てかもうこれって新選組の世界においてデフォルトになってるけれど、この仲良し設定って、司馬さんが元祖なんですよねー。この点で(いや勿論ほかにもたくさんありますが)、司馬御大は本当に偉大だと思う。ほんといい仕事しましたよ、先生…!すばらしい伝統を作ってくれた(笑)
あ、あと沖田が最期に自分の人生を振り返るとこなんか、ほんと泣ける…。
死後に香華をあげてくれるひとを残しておかなかった、そういう自分の人生がひどくはかないもののように思える、っていうあたりがぐっとくるのです。ああ、このひとは土方のために人生捧げたんだな、って。(そっちかよ)
斉藤は、口調が素敵。なんか副長相手なのにどことなくぞんざいで、ああ、そこに隠された二人の関係を垣間見られるような(笑)わー、えろーい。
しかし、この斉藤、斉藤一諾斎と同一人物化されてしまっているので、箱館までついてきてます。おいおいおい、と思いましたがでも、一番好きな一の台詞が蝦夷であるので、あまり責められないという(笑)
松前攻略時、みんなで川を泳いで渡るんですが、新選組は彰義隊より少し遅れているんですね。それを土方は気にいらないのだけど、大っぴらに怒れないもんだから、市村に「京都を思い出せ」と伝えさせるんです。そのときの斉藤の台詞。
「冗談じゃない」「京都のころでも、鴨川を泳いだことはなかった。あのひとにそう言ってくれ。北海道の冬に川泳ぎするとは思わなかった」
何がイイってこれ。この部分。
「あのひとにそう言ってくれ」
もう、なんかエロイんだよ、お前が言うと!(そんな勝手な…)
「あのひと」ってのが特に!妙に艶っぽいの!肉体関係のある人々の会話な感じがするの!
あと、特筆すべきは、土方が近藤の死後に榎本に尽くそうとか思ってることでしょうか。そうか、榎本が好きか、せんせーは。榎本も土方が好きなようだよ。よかったね。
しかし、箱館政府キャラは、大鳥榎本以外はあんまりキャラ立ちしてない感じです(笑)星君も爽やか青年で納得がいかない(いや、星君はほとんど出てきませんが)。腹黒青年がよいのに。
タロさんはひとつ好きなシーンがありました。大坂城での話。将軍が立ち退いたことを伝えるののに、親指をたてて、
「これはもうとっくにお立ちのきになりましたぞ」
って言うのが好きです、かっこいい。てかまあ、これ福地の記録らしいので司馬御大には関係ないのだけれど、タロさんらしくていい!将軍様のこと、親指で示しちゃうなんて、あー、俺の上に天はないって感じでいい(どんな感じだよ)。
あ、でもこの本で一番印象深いのは、
相馬が脱走している…
ことでした(笑)
なぜだ!御大、これは創作ですか?別に小説なのだから史実に完全に沿う必要は全然ありませんが、でもこれはどんな効果が…?なぞです。土方死後も新選組が続いたってのが納得いかなかったとか?いや、でもなあ…。そんなん言われちゃ、主計も立つ瀬ない(笑)というわけで、これはなんだったんだろう。
なぜって、二度買い防止のためですよ。ヒムラ、阿呆なひとなので、プレミアついてお高くなった本とか、持ってるの忘れてせっせとオークションで競り落とそうとしてたりするんですよ…!
『新選組血風録』 司馬遼太郎 角川文庫
というわけで、一番最初に読んだ幕末本は、『新選組血風録』でした。
とにかくひとつひとつが面白い…!司馬御大は、短編がうまいですよね。長編だと中だるみするけど(笑)、短編のあのなんともいえない読後感はなんだろう。
さてこの中で、好きだったお話だけ書きます。
一番好きなのが、『鴨川銭取橋』
ええと、話は武田観柳斎を疑いだして、追い詰めて粛清という流れで、山崎主人公です。
でもそんな流れはすっ飛ばして、土方と山崎にロックオンです。(えー)
だってもう、土方と山崎のやりとりにときめくときめく…!この2人の対話シーンが4回くらいあるんですが、もうかわいいったら!って、まああれですよ、対話シーンが4度っていうか、土方が登場するシーンが4度だから、つまり土方が出てるから好きなんだ…ってことなですが(言っちゃった…)
さて山崎が土方の部屋に行く1回目。
狛野(武田の隊の隊士)が殺された件で、現場に行かないのかと訊ねる土方。このとき火鉢で餅を焼いてます。そこまで監察がすることではなかったので、山崎はいぶかしく思ってる山崎に、土方は「あんた手を出しな」と言う。そんで、餅くれはるんやーと思って素直に手を出す山崎に、土方は
「餅は私が食う。この一件に手を出してみろというのだ」
と笑いもせずに返すという…。
もうなんだ、このケチんぼさん…!
餅くらいあげたっていいじゃないの!副長なんだからさ、労ってやんなさいよ…!
しかも笑いもせず、っていうのがイイです。書いてないけど、きっと山崎、「うわ、超恥ずかしい、俺…!」って内心あたふたなってると思う(笑)
土方は土方で、「うわ、手出されちゃったよ、文字通りの意味じゃねーっつの!これでやらなかったら、俺ケチと思わるじゃねーか。山崎のせいで!でも俺が食うんだからな、やらんわ!」って色々考えて、結局ケチと思われるだろうなって点に不機嫌なんだよ。
あ、ちなみに書いてませんよ、本文には、そんなこと。
で、これだけならまあ普通にかわいい二人なんですが…。
山崎が土方の部屋に行く2回目。
また土方先生ってばまた餅を焼いている。しかもなんか必死に焼いている。
それを気にせず、報告を始める山崎。っていうなんか2人の関係が進んだ感じにもときめきます。
「また餅焼いてはる、ま、ええわ…」ってな感じで報告したんでしょうが。
なんと今回は、先生餅をくれます…!すっごい感動したよ、私(笑)
土方に差し出された餅を手のひらに乗っけてもらって、でも土方の前で食べるわけにはいかないとか思ってたら、「いいよ、食ってくれ。俺がさきほどから丹精して焼き上げたものだ」って、許可が出たのです。
これ、想像したらすごいかわいい…。
土方と2人っきりのときに、熱々の餅をせっせと(自分だけ)食べる山崎。焼きたてだから当然、熱いはずなのに、山崎なんにも言わずに手のひらに載せてもらってるんですよね。内心、「あちちちち」ってなってたに違いないのに!もう、熱さに耐える山崎もかわいいけど、知ってて載せちゃう土方も意地悪くてかわいい。(いや、熱さに耐える描写も、知ってたかどうかとかいう描写も一切ありませんがね)
あの間に2人に何があったんだろう、気になる。本文では特に接触があったようには書かれてませんが、そこはアレですよ、書けないような何かがあったに違いないよ!
この話で、土方が山崎と話すときは、なんか常に土方が含みのある話し方をするんです。で、山崎はその含みも理解してる。あと自分がとっくに気づいてることをあえて知らない振りして土方をたててみたり、と、なかなかよいコンビです。
なんか一個じゃあれなんで(なんだよ)もうひとつ。
『池田屋異聞』
山崎が主人公。入隊以前から因縁のあった男と、池田屋で決着をつけるという話。山崎の家柄とか過去とか描かれてますが、史実にそってるのかどうかはわかりません(調べてないので)でも全部創作だろうと勝手に思ってます、だって山崎だもん…!
新選組入隊後、昔通ってた大坂の道場に挨拶に行くと、内偵と間違われて中に入れてもらえない。とりあえず厠だけ借りようと勝手に入っていったら、出たところを過去に因縁のあった浪人に斬り付けられる。おまけに、道場の娘から「いぬ!」と叫ばれおけを投げられ、泣いて逃げる。
流れとか背景とか無視して、シーンだけ書いてますが、ここ!ここが好きなんです!!なんてかわいそうな奴なんだ、お前…!!!
ここだけ見れば、銀魂の山崎でも十分いける(笑)
ってそれだけしか理由はありませんよ、だって土方先生がいないんだもの!!